倉庫84:関東外環ブギウギ取材ツアー

  今回は、関東の周りをぐるっと回る旅。観光はほとんどなしで、駅そばばかりを回る旅です。まずは、熱海駅「熱海そば」から。この店に寄るとついつい食べたくなる、黒はんぺんそば。白っぽく見えるのは、とろろいもです。黒はんぺんがわりとパサパサしているので、とろろいもで口当たりにまろやかさを演出するのは正解だと思います。
  丹那トンネルを抜けて、三島駅へ。新幹線ホームの「桃中軒で」、しらすのかきあげそばをいただきます。「トンネルを抜けると、ネギは青だった」。そんなキャッチが生まれても不思議ではない、分かりやすい変化です。しらすのかきあげは揚げ置きで冷めていますが、ホームの駅そばではフライヤーを導入できないでしょうから、致し方ないと思います。
  身延線経由で、山梨県に入ります。小淵沢駅「丸政」で、桜肉そばを味わいます。青春18きっぷで旅をしていると小淵沢で乗り継ぎになることが多いので、ホームにあるこの店には寄りやすく、個人的にお馴染みの店。面白いメニューがいろいろあるので、何回寄っても飽きません。甘辛い味が好きな人には、このメニューが特におすすめです。桜肉というと獣臭いイメージを連想する人もいるかもしれませんが、臭みはあまりありません。むしろ、食感の方が印象的です。肉が細く裂けるような、コンビーフのようなイメージです。
  松本から篠ノ井線に入り、篠ノ井駅「あんず」で野沢菜わさび昆布そばを。いつの間にか、ネギが白に戻っていますね。上記「丸政」ではネギが品切れとのことで乗っていないのですが、種明かしをすると小淵沢の時点ですでに白です。身延「丸屋」も白。このラインでは、山梨・静岡県境がネギの境界線になっています。
  長野駅では、ホームの「信州蕎麦処しなの」できのこそばをいただきました。キノコ(ヒラタケ)がどでかいです。長野駅には業者の異なる駅そばがたくさんあるので、どこで食べようかといつも迷います。今回の旅を終えた後にも、改札内の待合室に「福寿草」、改札外に「ナカジマ会館」がオープンしています。未食の新幹線ホームを含め、今後、まだまだ長野探訪の楽しみが残っています。
  長野から飯山線・上越線経由で越後湯沢へ。ここで、初日の行程が終了。初日から駅そば5杯という荒行でした。しかも、私はつゆを完飲しないと気が済まないタチなので、若干塩分過摂取が心配。しょうがないんです。単行本の締切に間に合わせ、なおかつ採算を合わせるには、このペースが必要なんです。写真は、終電間近でひっそりと静まり返る越後湯沢駅構内の土産物店街。人っ子ひとりいません。ちょっと薄気味悪いです。ホラー映画だったら、間違いなく脇っちょからいきなりゾンビが出てきます。
  越後湯沢駅構内には、こんな縦長型のコインロッカーがあります。これ、スキー・スノボ専用のロッカー。年間契約も可能。なるほど、これを年間契約しておけば、手ぶらで訪れることができるわけですね。私は近年とんとご無沙汰してしまっていますが、ウィンタースポーツが好きな人にとってはたいへん便利なシステムでしょう。
  本日のお宿は、こちら。越後湯沢駅から徒歩30分ほどの健康ランド「ゆざわ健康ランド」です。冬場はかなり込み合いそうな立地ですが、この季節には閑散としています。2400円で一泊できるので、このエリアとしては貴重な安宿でしょう。
  仮眠室は一面がガラス張りになっていて、ガーラ湯沢駅方面が望めます。すぐ裏にガーラ湯沢駅があるのですが、道はだいぶ迂回しているので、徒歩10分近くかかるでしょうか。
  越後湯沢の街には、屋根の上に登るためのハシゴが取りつけられた建物が多くあります。もちろん、雪下ろしをするためのものです。こういうワンシーンを見るだけでも、豪雪地帯であることが実感できます。
  さぁ、今日も張り切って駅そばを巡りましょう。まずは、越後湯沢駅「湯沢庵」で、湯沢ぜいたくそば。ネタ明かし話をひとつ。単行本『全国駅そば名店100選』のために食べた一杯だったのですが、結果的にこれは使わず、以前に食べた「雪割りそば」の方で掲載することにしました。食べてみて「雪割りの方が美味しい」と感じたというのが最大の理由ですが、ご当地っぽくないということと、視覚的にあまり美しくないと感じたのも一因です。
  長岡駅「長岡庵」は、いつの間にか運営がトッキーに変わっていました。ふのりそばを扱うなど、NRE時代からさらなる進化を遂げています。写真の栃尾あぶらげそばも、進化して生まれたメニューのひとつ。油揚げと言えば、栃尾。これ、常識です。日本一の生産量を誇る街なんですね。しかも、栃尾の油揚げ(通常は「あぶらげ」と呼びます)は、分厚いのが特徴。大豆の香りがしっかりしているうえ、つゆがよく染みこんで美味しいです。
  新潟駅には、改札外の自由通路上に小規模なフードコートが誕生し、その中に駅そば「こころ」が入りました。こちらでは、のりそばをいただいてみました。は、麺が見えません。つゆも見えません。ネギがなければ、ほぼスミベタです。これだけ海苔(板海苔ではなう、地海苔)が入っていると、つゆの風味も大きく変わってしまいます。反面、磯の香りはかなり強烈。つゆの味を見たい場合にはオススメできませんが、話のタネとしてはなかなかでしょう。写真を撮りたくなる一杯ですね。
  新潟から、羽越線でさらに北へ行きたい衝動を抑えて、磐越西線に入ります。会津若松で、乗り継ぎ。普通列車は100%、当駅での乗り継ぎが発生するので、この駅もまた乗降する機会が多いですね。
  郡山・会津若松間を走る車両には、「あかべこ」がデザインされています。これとは別に赤地の車両もあって、私はそちらの方が好きです。
  郡山に到着。今宵の宿は、この街にとります。人影のない地下道を通って、線路の反対側へ。明るいのでさほど薄気味悪さはありませんが、背後から足音が聞こえてきたりしたら身構えてしまいそうな雰囲気です。
  今日のお宿は、こちら。郡山駅歩15分の「まねきの湯」です。まぁ、健康ランドですね。ただし、宿泊利用する人はたいへん少ない(この日は7〜8人くらいだった)ということもあって、夜間は大部分が閉鎖されてしまいます。終夜利用できるのは、浴室と仮眠室だけ。風呂から上がったら、寝る以外には何もできません。1944円で一晩過ごすことができるのですから、文句も言えません。おとなしく寝ることにしましょう。
  最終日は、福島駅「松月庵」からスタートです。この店も、個人的にはもうお馴染みになってきました。立ちそばコーナーと座そばコーナーに分かれた店で、同じ麺を使っているのですが値段に天地ほどの差があります。当然、立ちコーナーで食べます。この店で食べるのは3回目ですが、まだ座コーナーには入ったことがありません。今後も入る予定がありません(笑) この店は味覚的にもたいへん好きなのですが、同時に、ホットコーヒーの無料サービスがあるのも嬉しいポイントです。そばとコーヒーの相性を疑問視する人もいるでしょうが、別に一緒に飲まなくてもよいので。待っている間に飲む、食後に一息つくなど、楽しみ方はいろいろあります。
  時間調整の意味もあって、福島駅から少々歩きました。本当は松川駅まで歩こうと思っていたのですが、途中の福島大学付近の山中で獣道に迷い込んでしまいかなりロスをしたので、金谷川駅まで。写真は、信夫橋で荒川(阿武隈川の支流)を渡るときに、土手にあった表示。いつからこの表示があるのか分かりませんが、原発事故に伴う風評被害があるという前提で、訪れてくれた人々への感謝なのだろうと受け取りました。
  時間がよろしいようなので、郡山に戻ります。駅から2分ほどにある立ちそば「そばの神田」で、天ぷらそばをいただきます。仙台で有名なミニチェーンの姉妹店ですね。もっとも、郡山市民の間ではそんなことは知る由もないのかもしれませんが。味は、仙台市内の各店とはだいぶ異なります。麺・天とも、仙台よりもだいぶジャンク感が強いです。
  磐越東線でひと駅、三春駅「ばんとうプラザ」では、こんなものをいただいてみました。三春三角揚げの、「焼き」。拙著ではそばの上に三角揚げを乗せた「三春三角揚げそば」を紹介していますが、そのトッピングである三角揚げに甘辛味噌を塗り、中にキャベツを挟んで、香ばしくなるまで炙った一品。ビールが欲しくなります。170円と安いので、気軽に試せるのが嬉しいですね。
  最後の一杯は、いわき駅の駅ビルに入っている「つぼみ」で。十割そば(かけ)に、キス天をトッピングしました。いわきあたりだと、シロギスもよく釣れるんでしょうね。広大な砂浜での豪快な投げ釣り、昔よくやりました。懐かしいです。十割そばなのですが、そばの風味はそれほど強くは感じませんでした。つゆが甘辛いからでしょうかね。次回には、もりそばを試してみたいと思います。
  常磐線で茨城県に入る(写真は取手駅)と、もう旅は終わりです。2泊3日くらいだと、やはり全然物足りないですね。1週間くらいふらふら歩かないと、「あー、楽しかった!」という感じにはなりません。まぁ、仕事ですから、一応は。帰って、写真を整理して、記事の組み立てを考えたら、早くも次の旅が始まります。う〜ん、忙しい。忙しいけど、楽しい。こんなことをやっていて食べていけるのですから、私は幸せ者です。

戻ります。